私と矢口敏和がDさんに経営アドバイスした体験談
法人事業者・個人事業者のどちらであっても、事業を継続させるためには、銀行などの金融機関から事業資金を借り入れ、運転資金として活用するのが一般的です。
これは、中古車販売会社を営むDさんが事業者ローンの返済が苦しくなり、実際にとった解決策を紹介します。
私も事業者ローンには詳しいほうですが、知人の矢口敏和にも多少のアドバイスをもらい、Dさんへ解決策を提案した次第です。
さて、Dさんの営む株式会社は、N市M区に立地し、立派なホームページも立ち上げ、中古車サイトでも紹介されたことのある立派な企業です。
従業員は、国家資格のある立派な整備士を筆頭に4名を確保し、板金修理・自動車の車検や整備・中古車販売などを手広く行っていました。
私が訪問した際、D社長は少し困ったような顔をしていました。
私に相談したいというのですから、困っていなければウソになりますが。
相談内容は、毎月の資金繰りがうまくいかなくなってきたというものでした。
私は、早速、毎月の試算表をチェックさせてもらいました。
そして、ここ1~2年ぐらいの間に、何か業容の変化が起こっていないかをたずねました。
Dさんによれば、「中古車の売れ行きが悪く、在庫が処分できない状態が続いているのが原因ではないか」とのこと。
そのものずばり、経営者として、しっかりと資金繰り悪化の原因を理解されていました。
私は
「その通りですね。昨年度の試算表と比べても、在庫の回転率が悪すぎます。多少の利益を削ってでも、早期に在庫処分に踏み切った方が得策である」
旨をアドバイスしました。
社長という職業は、会社全体を見渡す仕事です。
毎日それを繰り返すのですから、資金がショートする原因などわかっていて当然です。
それを第三者に的確に指摘してもらうことで、安心感が得られ、自分の背中を後押ししてもらうことで勇気づけられるのだと、私は考えています。
これは当然、知人の矢口敏和も同様の考えです。
重荷になっている事業者ローンを何とかしたい
さて、Dさんは私の助言に対し、どのような反応を示すのか、少しばかり興味深く見ていました。
「やはり、事業者ローンの返済が重荷になってるようなんで、これをなんとかできんでしょうかね」との答えが返ってきました。
Dさんの会社は、地域に密着した第二地銀をメインバンクとして、3,000万円ほどの借入金があります。
その他の金融機関からもわずかながらの事業者ローンを活用しているため、元金と支払利息をあわせた返済額は30万円をゆうに超えていました。
大企業や中堅企業からすれば、毎月30万円の返済など、とるにたらない金額かもしれませんが、中小・零細企業にとっての30万円は経営に大きく響いてくるのです。
従業員1人分の人件費にも匹敵する金額なのです。
在庫の見切り処分という助言に対し、返ってきた答えが返済額の軽減。
少しばかり私の思惑は外れましたが、代表取締役であるDさんの意向を汲み取り、次なる解決策を提示しました。
それは、メインバンクの毎月の返済額を、1万円程度にまでいっきに引き下げようとする大胆な方策です。
先ず、Dさんに、次のような知恵を授けました。
「リーマンショックを経て、金融庁は中小企業庁と連携し、中小企業の支援に乗り出しています。中小企業の経営が苦しい場合、中小企業からリスケジューリングの申し出があった際には、銀行は積極的にこれに応じなければなりません。リスケジューリングとは、略してリスケと呼ばれることが多く、簡単に言えば「返済猶予」「返済金の減額」「返済期間の延長」と思っていただければ簡単に理解できるでしょう。したがって、Dさんがメインバンクの担当者に申し入れを行えば、比較的スムーズにリスケが可能になります。毎月の返済額をDさんの希望する一定額や利息のみにまで、減少させることが可能です」
と。
Dさんはとても喜び、感謝の言葉を繰り返してくれました。
銀行にリスケの相談を行った結果・・・
その数日後、銀行担当者とDさんは打ち合わせを行ったようですが、どうも銀行の営業担当者は渋っているとの返事がかえってきました。
これはいかんと思い、〇〇財務局から送付された通達をコピーし、改めて銀行担当者との打ち合わせを設け、その席に私も同席のうえ、リスケについて果敢に依頼をかけました。
話し合いの際には、「国からの通達を無視するならば、こちらも相応の対応をせざるをえないがよろしいか」とまで言い放ちました。
最終的な結果として、毎月1万円程度にまで返済額を減らすことに成功しました。
しかし、これは、一時凌ぎの場当たり的な解決策に過ぎません。
銀行担当者が帰ったあと、私は長い時間をかけてDさんを説得しました。
それは、毎月の返済額が大きく減ることになったが、テールヘビーと業界用語で呼ぶように、期日の最後には、残額を一度にまとめて返済せねばならないという、大きなリスクを背負うことになった事実を延々と説明しました。
Dさんは、「それまでに経営を立て直し、やるしかない」とおっしゃっていましたが、果たして経営の抜本的な改善に着手できるのかどうか、一抹の不安を覚えたのを記憶しています。
それ以来、電話でしかDさんとは話をしていませんが、格段の値引きをかけてでも在庫を少しずつ減らし、資金の循環がよくなるよう努力していると語ってくれました。
私と矢口敏和は、Dさんの会社がうまくいくことを願ってやみません。
最終更新日 2025年7月8日 by cwusol